クローゼットの扉を開けて、ずらりと並んだハンガーを前にため息をついた経験はないでしょうか。衣類は一つひとつが軽いのに量が多く、しかもシワや型崩れを気にしなければならない厄介な荷物です。全部を畳んでダンボールに詰めれば場所は取りませんが、新居でアイロンがけの山が待っています。かといって全部を掛けたまま運ぼうとすれば、今度は容積が足りません。この記事では、掛けて運ぶ衣類と畳んで運ぶ衣類を分ける考え方を軸に、ハンガーボックスの使い方、ダンボールへの詰め方、衣装ケースの扱いまでを具体的に説明します。荷造りの中でも量が多いパートなので、方針を決めてから手を動かすと作業が驚くほど速くなります。

衣類の梱包は「掛ける」と「畳む」を分けるところから
まず、手持ちの衣類を三つに仕分けます。この作業を先にやっておくと、後の梱包が流れ作業になります。
- 掛けたまま運びたいもの:スーツ、ジャケット、コート、ワンピース、シワが目立つブラウスなど
- 畳んで問題ないもの:Tシャツ、ニット、スウェット、ジーンズ、下着、靴下、部屋着
- この機会に手放すもの:ここ数年着ていない服、サイズが合わなくなった服
三つめの「手放すもの」を先に決めるのがコツです。荷造りは運ぶ量を減らすことが最大の時短になります。着ていない服を新居まで運び、また同じクローゼットの奥にしまうのは、労力としてはもったいない話です。状態のよいものはリユースショップやフリマアプリに回し、傷んでいるものは自治体の資源回収や古着回収の対象になるか確認してみましょう。衣類のリユース・リサイクルの考え方については環境省が情報を公開しています。
仕分けは「季節」ではなく「シワが気になるかどうか」で分けるとうまくいきます。真夏の引越しでも冬のコートは掛けて運んだほうが型崩れしませんし、夏物のTシャツは畳んで問題ありません。
ハンガーボックスとは?サイズと入る枚数
ハンガーボックスは、上部にパイプが渡された背の高いダンボール箱です。ハンガーに掛けた服をそのまま吊るして運べるため、シワを気にせず衣類を移動できます。引越し業者が搬入時に提供し、荷ほどき後に回収していく形が一般的です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 幅・奥行き | およそ50cm前後 |
| 高さ | およそ100cm前後 |
| 入る枚数(薄手) | シャツ・ブラウスで15〜20着ほど |
| 入る枚数(厚手) | コート・ジャケットで7〜10着ほど |
| 平均的な収納量 | 混在した状態で10〜15着ほど |
数字はあくまで目安で、服の厚みによって上下します。ダウンコートのようにかさばるものばかりを入れると、10着を切ることもあります。逆にワイシャツだけなら20着近く入るでしょう。パンパンに詰めるとかえってシワになるため、ハンガー同士に指1本分の隙間ができる程度で止めておくのが賢明です。
業者から借りられない自力の引越しや、掛けたい服が多い場合は、組み立て式のハンガーボックスを通販で用意しておくと当日慌てずに済みます。

ハンガーボックスの入手方法
引越し業者から借りる
最も手軽なのが、引越し業者からのレンタルです。業者やプランによっては無料で借りられることがあり、見積もりのときに「ハンガーボックスは何箱まで使えますか」と聞いておくと安心です。無料の箱数に上限があり、それを超えると追加料金という仕組みの業者もあります。手持ちの掛け衣類の量をざっくり数えてから相談すると、必要数を伝えやすくなります。
レンタルの場合、ハンガーボックスは搬入日の当日に返却するのが原則です。作業員が帰る前に中身を出し、空箱を引き渡します。荷ほどきを後回しにしたい気持ちはわかりますが、この箱だけは当日に空にする必要があると覚えておきましょう。新居のクローゼットに掛け直すだけなので、実際の作業は数分で終わります。
購入する
自力で引越しをする場合や、レンタルの上限を超える場合は購入する方法があります。梱包材の通販サイトやホームセンターで扱われており、複数枚セットで販売されていることが多いようです。組み立て式で、使わないときは畳んで保管できます。衣替えの収納にも転用できるため、量が多い方は持っておいても損はないでしょう。
ダンボールで代用する
費用をかけたくない場合は、通常のダンボールで代用する方法もあります。背の高い箱の上部左右に穴を開け、突っ張り棒や丈夫な棒を渡せば簡易的なハンガーボックスになります。強度は専用品に劣るため、重いコートを大量に掛けるのには向きませんが、シャツやブラウス程度なら実用に耐えます。
自作のハンガーボックスは、底が抜けやすい点に気をつけてください。底面はガムテープを十字に貼り、さらに外周を一周させて補強しましょう。持ち上げるときは底に手を添え、側面だけを持たないようにします。
ダンボールに畳んで詰めるときのコツ
使うダンボールのサイズ
衣類は軽いので、大きめのダンボールを使って構いません。むしろ小さい箱に分けると箱数が増えて管理が煩雑になります。ただし詰め込みすぎると持ち上げたときに底が抜けることがあるので、大きい箱でも8割程度で止めておくと安心です。
畳み方と詰め方
畳んだ衣類は、平積みではなく立てて並べると扱いやすくなります。本を棚に並べるように縦に入れていくと、上から見たときにどの服がどこにあるか一目でわかり、下の服を取り出すために全部どかす必要がなくなります。新居での荷ほどきでも、そのまま引き出しに移せる形です。
ニットは畳んで入れて構いませんが、ハンガーに掛けたまま長時間運ぶと自重で肩が伸びることがあります。ニット類はむしろ畳んで運ぶほうが型崩れしにくいという点は覚えておきましょう。
詰めるときの順番
箱の底には重いもの、上には軽いものが基本ですが、衣類だけの箱なら重量差はわずかです。それよりも「新居で最初に使うもの」を上に入れるほうが実用的です。数日分の着替え、タオル、下着は別の箱にまとめ、「すぐ開ける」と明記しておきましょう。
衣類の箱は、割れ物の緩衝材としても活躍します。食器や小物の隙間にタオルやTシャツを詰めておけば、新聞紙より柔らかく、荷ほどき後にそのまま洗濯機へ入れられます。梱包材を買う量を減らせる実用的な工夫です。
衣装ケース・タンスの中身はどうする?
プラスチックの衣装ケースは、中身を入れたまま運べる場合があります。引越し業者に確認したうえで、引き出しが飛び出さないように養生テープで固定すれば、そのまま運搬してもらえることが多いようです。ただし重すぎると引き出しが割れたり、運搬中に本体がたわんだりするため、詰めすぎている場合は中身を減らしておきましょう。
引き出し式の衣装ケースは、新居でもそのまま収納として使えるのが強みです。これから衣類をまとめ直すなら、中身ごと運べる衣装ケースに切り替えておくのも一つの方法です。
木製のタンスは、中身を出してから運ぶのが基本です。中身が入ったままだと重量が増して搬出が難しくなり、階段での取り回しにも支障が出ます。引き出しは抜いて別々に運ぶことが多いので、抜いた引き出しの中身は先にダンボールへ移しておきましょう。
桐タンスや高級家具は、専用の梱包が要るケースがあります。見積もりの段階で伝えておくと、当日に適切な養生材を持ってきてもらえます。万一の破損に備え、運送業者の責任範囲を定めた標準引越運送約款の内容を把握しておくのも有効です(国土交通省)。

クリーニングを引越しに組み込む
冬物のコートやスーツを引越し前にクリーニングへ出しておくと、荷物が一時的に減り、当日の運搬が軽くなります。店舗によっては保管サービスがあり、指定した時期まで預かってもらえる仕組みもあります。新居の住所へ配送してもらえるなら、引越し後に受け取るという流れも組めるでしょう。
ただし、引越しの前後は生活が慌ただしく、受け取りを忘れるリスクがあります。預ける期間と受け取り方法をはっきり決めてから利用しましょう。クリーニングをめぐるトラブルの相談事例は国民生活センターにも寄せられているため、預ける前に品物の状態を写真で残しておくと安心です。
荷造りを始めるタイミングと進め方
衣類は量が多いぶん、まとめて一日で片づけようとすると挫折しがちです。引越し日の2〜3週間前から、少しずつ進めるのが現実的でしょう。
最初に手をつけるのは今の季節に着ない衣類です。夏の引越しなら冬物のコートやセーター、冬の引越しなら夏物のTシャツや水着。これらは梱包しても生活に支障が出ないため、早い段階で箱に収められます。手放す服の選別も、この時期にまとめて済ませておくと後が楽です。
次に、今の季節のもののうち出番の少ない服を詰めます。フォーマルウェア、着物、めったに着ないアウターなどです。ここまでで衣類の半分以上は箱に入っているはずです。
最後に残るのが、引越し直前まで着る普段着と、当日以降に着る服。この分は前日にまとめて詰めるか、手荷物のバッグに入れて自分で運びます。前日に詰める箱には「衣類・すぐ開ける」と書き、トラックの最後に積んでもらえるよう作業員に一声かけておくと、新居で真っ先に取り出せます。
| 時期 | 詰めるもの |
|---|---|
| 2〜3週間前 | オフシーズンの衣類、手放す服の仕分け |
| 1週間前 | 今季だが出番の少ない服、フォーマル、小物 |
| 前日 | 普段着(数日分を残す)、洗濯物の取り込み |
| 当日 | 着替え・タオルは手荷物へ |

衣類の梱包でよくある質問
Q. ハンガーボックスは何箱くらい必要ですか?
A. 掛けたい衣類の枚数を数え、10〜15で割ると目安が出ます。ワンルームの一人暮らしなら1〜2箱、家族4人分なら4〜6箱程度になることが多いようです。厚手のアウターが多い季節は、枚数あたりの容積が増えるので少し余裕を見ておきましょう。
Q. ハンガーは服に掛けたままでいいですか?
A. ハンガーボックスを使う場合は掛けたままで問題ありません。むしろ外してしまうと箱の意味がなくなります。針金ハンガーは変形しやすいので、この機会にプラスチックや木製のものへ買い替えるのも一つの手です。
Q. スーツはどうやって運ぶのが安全ですか?
A. 型崩れを避けたいなら、ハンガーボックスに掛けたまま運ぶ方法が向いています。数が少ないなら、ガーメントバッグ(洋服カバー)に入れて手荷物として自分で運ぶ手もあります。畳む場合は、肩の部分に丸めたタオルを入れてから畳むと折り目が付きにくくなります。
Q. 帽子やバッグはどう梱包しますか?
A. 帽子は中に丸めた紙を詰めて形を保ち、つぶれないよう箱の上部に入れます。バッグも同様に紙や小物を詰めて形を作り、大きいものから順に入れ子にすると容積を節約できます。革製品は湿気に弱いため、除湿剤を一緒に入れておくとよいでしょう。
Q. 引越し当日に着る服はどうすればいいですか?
A. 動きやすく、汚れてもよい服装がおすすめです。翌日以降の着替えとあわせて、ボストンバッグなど自分で管理する荷物にまとめておきましょう。トラックに積んだ荷物は、到着してもすぐ取り出せるとは限りません。
Q. 衣類の箱にはどう書けばいいですか?
A. 「衣類」だけだと箱が10個並んだときに区別できません。「衣類/夫・トップス」「衣類/冬物」のように、誰の何かまで書いておくと荷ほどきが楽になります。新居のどの部屋に置くかも書き添えると、作業員が適切な位置へ運んでくれます。
Q. 服の量が多すぎて箱に入りきりません。
A. 圧縮袋を使うと容積を減らせます。ダウンやニットは圧縮すると復元に時間がかかるため、Tシャツやスウェットなど回復しやすい素材に限定して使うとよいでしょう。それでも収まらないなら、量そのものを見直すタイミングかもしれません。
まとめ
衣類の梱包は、「掛ける」「畳む」「手放す」の三つに仕分けるところから始まります。掛けたい服はハンガーボックスへ、シワが気にならない服は畳んで大きめのダンボールへ立てて詰める。この二本立てを決めてしまえば、あとは機械的に作業を進められます。
ハンガーボックスは業者から借りられることが多く、幅・奥行き50cm前後、高さ100cm前後で10〜15着が目安です。レンタル品は搬入当日に空にして返すというルールだけ押さえておけば、当日にあわてることもありません。衣装ケースは中身を入れたまま運べるケースが多いので、見積もり時に確認しておくと荷造りの手間がさらに減ります。


