引越しの準備を進めていると、多くの人がぶつかるのが粗大ごみの壁です。古いソファ、傷だらけのカラーボックス、もう使わなくなった自転車。新居に持っていくほどではないけれど、燃えるごみの袋にも入らない。そんな荷物が部屋の隅にどんどん積み上がっていきます。
やっかいなのは、粗大ごみの処分は「思い立った日にすぐ捨てられない」という点です。自治体の収集は予約制で、申し込んでから実際に回収されるまで数週間かかることも珍しくありません。引越し前日に慌てて電話をかけても、もう間に合わないというケースは本当によくあります。
この記事では、引越しで出る粗大ごみの処分方法を費用の目安つきで整理し、どの方法を選べば損をしないのか、そして引越し日に間に合わせるためのスケジュールの組み方まで解説します。読み終わる頃には、自分の家の粗大ごみをどう片付ければいいのかがはっきり見えているはずです。

引越しの粗大ごみ、処分方法は大きく5つ
粗大ごみの片付け方は、大きく分けて5つのルートがあります。それぞれ費用も手間もスピードも違うので、まずは全体像をつかんでおきましょう。
| 処分方法 | 費用の目安 | スピード | 手間 |
|---|---|---|---|
| 自治体の粗大ごみ収集 | 1点あたり数百円〜3,000円程度 | 遅い(数日〜数週間待ち) | 玄関前まで自分で運ぶ |
| 自治体の処理施設へ持ち込み | 収集よりさらに安いことが多い | 予約が取れれば早い | 車と積み下ろしが必要 |
| 不用品回収業者 | 軽トラ1台8,000〜15,000円程度 | 速い(即日対応も) | ほぼおまかせ |
| 引越し業者の引き取り | 品目ごとに設定(自治体より高め) | 引越し当日に完結 | ほぼおまかせ |
| 売る・譲る | 0円〜プラスになることも | 買い手次第 | やや多い |
この表を見て「じゃあ全部自治体でいいのでは」と思うかもしれません。確かに費用だけを見ればそのとおりです。ただし自治体の収集は引越しシーズンほど予約が埋まりやすく、申し込みが遅れると引越し日に間に合いません。ここが最大の落とし穴です。
いちばん安いのは自治体の粗大ごみ収集
費用は1点あたり数百円から
もっとも費用を抑えられるのが、住んでいる市区町村の粗大ごみ収集です。品目ごとに手数料が決まっており、数百円から数千円の範囲に区分けしている自治体がほとんどです。たとえば横浜市は200円・500円・1,000円・1,500円・2,200円の5段階で、いすやカラーボックスのような小型の家具は最安の200円区分に入ります(横浜市 粗大ごみ処理手数料表)。品物の種類だけでなく、大きさや材質でも区分が変わります。
金額は自治体によってかなり差があります。同じソファでも隣の市では倍の料金ということも普通にあるので、必ず自分が住んでいる市区町村の公式サイトで品目別の手数料を確認してください。
申し込みから回収までの流れ
手順そのものはシンプルです。
- 自治体の粗大ごみ受付センターに電話またはインターネットで申し込む
- 品目・点数を伝え、収集日と手数料、受付番号を確認する
- コンビニや指定販売店で粗大ごみ処理券(シール)を購入する
- 処理券に受付番号や名前を書き、品物の見やすい場所に貼る
- 収集日の朝、指定された場所(玄関前・集積所など)に出す
注意したいのは運び出しは自分でやる必要があるという点です。部屋の中まで取りに来てくれるわけではありません。大型のタンスやベッドを一人で階段から下ろすのは現実的に難しいこともあるので、そこは正直に見積もっておきましょう。
重い家具を玄関まで動かすときは、脚の下に家具移動用のスライダーを差し込むと、床を傷つけずに少ない力で滑らせられます。
粗大ごみ処理券は、購入後の払い戻しができない自治体がほとんどです。点数を間違えて多く買ってしまわないよう、申し込みで確定した金額どおりに購入しましょう。
持ち込みならさらに安く、早く
車が使えるなら、自治体の清掃工場やリサイクルセンターへ直接持ち込む方法も検討する価値があります。収集を待つより手数料が安く設定されているケースが多く、予約さえ取れれば数日以内に片付けられます。ただし持ち込みも事前予約制の自治体が大半で、受付時間が平日昼間に限られることもあります。
持ち込みでは積み込みも積み下ろしも自分の手で行います。ささくれた木材や金具で手をけがしないよう、滑り止め付きの軍手を用意しておきましょう。

エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機は粗大ごみに出せない
ここは引越しで最も間違えやすいポイントです。エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目は家電リサイクル法の対象で、自治体の粗大ごみ収集では回収してもらえません。
リサイクル料金の目安
この4品目は、メーカーごとに定められたリサイクル料金を負担して処分します。金額はメーカーの区分によって二段階に分かれており、下の表は多くのメーカーが採用している標準的な額です(税込。メーカーによってはこれより高い設定もあります)。
| 品目 | リサイクル料金の目安 |
|---|---|
| エアコン | 990円 |
| テレビ(ブラウン管15型以下) | 1,320円 |
| テレビ(ブラウン管16型以上) | 2,420円 |
| テレビ(液晶・有機EL・プラズマ15型以下) | 1,870円 |
| テレビ(液晶・有機EL・プラズマ16型以上) | 2,970円 |
| 冷蔵庫・冷凍庫(170L以下) | 3,740円 |
| 冷蔵庫・冷凍庫(171L以上) | 4,730円 |
| 洗濯機・衣類乾燥機 | 2,530円 |
これに加えて、収集運搬料として2,000〜3,000円程度が別途かかります。正確な金額はメーカーによって変わるため、家電リサイクル券センターのリサイクル料金一覧で自分の家電のメーカー・型番を調べてから動くと間違いがありません。
処分の依頼先
買い替えなら、新しい家電を買う店に引き取りを依頼するのがいちばん簡単です。買い替えではない場合は、その家電を買った店、または自治体が案内する家電リサイクル受付窓口に相談します。パソコンは家電リサイクル法ではなく資源有効利用促進法の対象で、メーカーの回収窓口や自治体の小型家電回収を利用します。
時間がないときの不用品回収業者と、その選び方
「引越しまであと1週間、自治体の収集はもう埋まっている」。そんな状況で頼りになるのが不用品回収業者です。軽トラック1台分の積み放題プランで8,000〜15,000円程度、2トントラック1台分で25,000〜50,000円程度が費用の目安になります。部屋からの運び出しまでやってもらえるので、体力的な負担はほぼゼロです。
許可の有無を必ず確認する
ただし、業者選びは慎重に。家庭から出たごみを回収して運ぶには、市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可、または市区町村からの委託が必要です。この許可を持たない業者による回収は違法です。国民生活センターにも「1トン7,000円と言われたのに、作業後に2万5,000円以上を請求された」といった相談が寄せられており、2021年度時点で相談件数は2,000件を超えています(国民生活センターの注意喚起)。
業者に依頼する前のチェックリスト
・一般廃棄物収集運搬業の許可番号を公式サイトに明記しているか
・作業前に見積書を出してくれるか、追加料金の条件が書面にあるか
・所在地・固定電話・会社概要がはっきりしているか
・「無料回収」をうたいながらトラックで巡回しているだけではないか
産業廃棄物の許可しか持っていない業者が、家庭ごみの回収も可能であるかのように見せているケースもあります。許可番号を提示できない業者には依頼しない。これだけは徹底してください。

引越し業者に引き取ってもらう手もある
大手の引越し業者の多くは、オプションで不用品の引き取りに対応しています。引越し当日に荷物と一緒に持っていってもらえるので、スケジュール管理がとても楽になります。
費用は自治体の収集よりは高めですが、「自分で運び出さなくていい」「引越し日にそのまま片付く」という価値を考えれば十分に選択肢に入ります。ただし引き取れる品目が限られていたり、対応していない支店があったりするので、見積もりの段階で必ず確認しておきましょう。後から追加すると割高になることもあります。
捨てる前に「売る」を挟むと費用が変わる
まだ使えるものを処分手数料を払って捨てるのは、正直もったいない話です。処分費がかかるどころか、逆にお金が戻ってくる可能性もあります。
売る・譲るの主な手段
- フリマアプリ:小型〜中型のものが得意。大型家具も配送サービスを使えば出品できる
- リユースショップの出張買取:家具・家電をまとめて査定してもらえる。運び出しまで無料の店も多い
- 地域の掲示板サービス:0円で譲る前提なら引き取り手が見つかりやすい
- 知人に譲る:手数料も送料もかからないいちばん確実な方法
ただし売却には時間がかかります。引越しの2か月前くらいから動き出し、「◯月◯日までに売れなければ処分に切り替える」という締切を決めておくと迷わずに済みます。
フリマアプリで売るなら、発送用の資材を先にそろえておくと、売れた日にすぐ送り出せます。宅配袋や緩衝材は引越しの荷造りにも流用できます。
引越し日に間に合わせるスケジュール
粗大ごみは早さがすべてです。逆算のスケジュールを頭に入れておきましょう。
2か月前:家中を見回して処分するものをリストアップ。売れそうなものは出品を開始
1か月前:自治体の粗大ごみ収集を申し込む。家電4品目の依頼先も決める
3週間前:処理券を購入。売れ残りそうなものの処分方法を決める
2週間前:収集日に立ち会えるか最終確認。間に合わないものは回収業者へ相談
1週間前:残った不用品を引越し業者の引き取りオプションに追加できるか確認
特に1月から4月にかけての引越しシーズンは、自治体の受付も回収業者も混み合います。この時期は「1か月前申し込み」でも遅いことがあるため、引越し日が決まった時点ですぐ動くのが正解です。

やってはいけない処分の仕方
置き去りにして退去する
「どうせ大家さんが片付けるだろう」と粗大ごみを部屋に残したまま退去するのは避けてください。残置物の処分費用は原状回復費として敷金から差し引かれ、足りなければ追加請求されます。自分で処分するより高くつくことがほとんどです。
大きな家具を運び出したあとは、その下に隠れていた床の汚れや壁の黒ずみが目立つものです。退去立ち会いの前に、メラミンスポンジでさっと落としておくと印象が変わります。
集積所に無断で置く
処理券を貼らずに集積所へ置いたり、他人のマンションのごみ置き場に持ち込んだりするのは不法投棄にあたります。廃棄物処理法で罰則が定められている行為なので、面倒でも正規のルートを使ってください。
引越し当日まで判断を先延ばしにする
当日になって「これ、持っていくか捨てるか決めてない」という荷物が残っていると、作業が止まります。結局そのまま新居に運び込み、段ボールのまま何年も置きっぱなし、というのがよくあるパターンです。
よくある質問
Q. 粗大ごみの申し込みは、引越しのどれくらい前にすればいいですか?
A. 最低でも1か月前が目安です。1〜4月の引越しシーズンは予約が埋まりやすいため、引越し日が確定した時点で申し込むのが安全です。自治体によっては収集まで3週間以上待つこともあります。
Q. 粗大ごみと燃えるごみの境目はどこですか?
A. 多くの自治体では「一辺が30cmを超えるもの」を粗大ごみとしていますが、基準は自治体ごとに異なります。50cm以上を粗大ごみとする自治体もあるので、公式サイトの分別ルールを確認してください。
Q. 収集日に立ち会えない場合はどうすればいいですか?
A. 多くの自治体は立ち会い不要で、指定された場所に出しておけば回収されます。ただし出す時間帯が決まっていることが多いので、朝早く出せない場合は前日に出してよいかを受付センターに確認しておきましょう。
Q. 引越し先の自治体で処分することはできますか?
A. 粗大ごみの収集はその自治体の住民向けサービスです。転入後であれば新居の自治体に申し込めますが、旧居から運んできたものを持ち込む形になるため、運搬の手間と費用を考えると旧居側で処分したほうが現実的です。
Q. マットレスやソファは自治体で回収してもらえますか?
A. 多くの自治体で粗大ごみとして回収対象になっています。ただしスプリング入りマットレスは受け付けていない自治体もあり、その場合は販売店の引き取りや専門の回収業者に依頼することになります。事前確認が必須です。
Q. 家電4品目を無料で引き取るという業者は利用しても大丈夫ですか?
A. 慎重に判断してください。家電リサイクル法の対象品目は本来リサイクル料金の負担が必要です。無料をうたう業者の中には必要な許可を持たないところもあり、後から高額請求されるトラブルが報告されています。許可番号を確認できない場合は依頼を避けましょう。
Q. 処分費用をできるだけ抑えるにはどうすればいいですか?
A. 「売れるものは売る」「自治体の持ち込みを使う」「回収業者はまとめて1回で頼む」の3つが基本です。特に回収業者は少量でも基本料金がかかるため、複数回に分けるより一度にまとめたほうが安くなります。
まとめ
引越しの粗大ごみは、費用を取るか時間を取るかのバランスで決まります。時間に余裕があるなら自治体の収集や持ち込みがいちばん安く、余裕がないなら不用品回収業者や引越し業者の引き取りが間違いがありません。そして家電4品目だけは別ルート、というのを忘れないでください。
何よりも大事なのは、引越し日が決まったらすぐに動き出すこと。粗大ごみは「あとでやろう」が通用しない数少ない作業のひとつです。今日リストアップを始めれば、引越し前日に部屋の隅で途方に暮れることはなくなります。

