引越しの見積もりを取ると、必ず出てくるのが「基本」「ハーフ」「フル」といったコースの選択です。業者によっては「らくらくコース」「おまかせパック」といった呼び方をしていて、何がどう違うのか分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、これらのプランが分けているのは荷造り(梱包)と荷解き(開梱)を誰がやるかという1点だけです。運搬そのものの中身はどのコースでも大きく変わりません。ここさえ理解すれば、各社のややこしいプラン名は一気に見通しがよくなります。
この記事では、荷造り・荷解きまで任せられるプランの中身を、各社のサービス階層に沿って整理します。単身パック(コンテナ便)の話ではなく、あくまで「作業をどこまで頼むか」というサービスの階層に絞って解説しますので、コース選びで迷っている方はぜひ参考にしてください。

おまかせ系プランは「3階層」で理解すると早い
どの引越し業者も、作業範囲によっておおむね3つの階層を用意しています。名前は違っても構造はほぼ共通です。
第1階層:荷造りも荷解きも自分でやる
いわゆる標準的なプランです。ダンボールへの箱詰めと、新居での箱開けは依頼者が行います。ただし大型家具・家電の梱包と設置は、このプランでも業者が担当するのが一般的です。「基本コース」「セルフプラン」「エコノミープラン」などと呼ばれます。自分で荷造りする場合、業者から届く段ボールだけでは足りないこともあるので、市販のセットで補えるようにしておくと安心です。
第2階層:荷造りだけ任せる
箱詰め作業をスタッフが行い、新居での荷解きは自分でやるプランです。引越し前は手続きや掃除に追われて時間がないけれど、引越し後はゆっくり片付けられるという人に向いています。「ハーフコース」「ハーフプラン」「スタンダードプラン」などの名称です。
第3階層:荷造りも荷解きも任せる
梱包から開梱、収納までを丸ごと任せるプランです。「フルコース」「フルプラン」「まるごとおまかせ」などと呼ばれます。仕事や育児で引越し作業に時間を割けない方にとっては、この階層の価値が最も高くなります。
プラン名の「らくらく」「おまかせ」は、いずれも第2階層以上を指す販売名称です。単身者向けのコンテナ輸送を指す「単身パック」とはまったく別の話なので、混同しないようにしましょう。
主要各社のプラン名と作業範囲
実際に各社がどんな名前を付けているのかを並べてみます。見積もりを比較するときは、この対応関係を頭に入れておくと同じ土俵で比べられます。
アート引越センターの「おまかせパック」
おまかせパックには基本コース・ハーフコース・フルコースの3つがあります。基本コースでは大型家具などの梱包からセッティングまでを担当し、荷造りと荷解きは依頼者が行います。ハーフコースは基本コースに荷造り作業をプラスしたもの、フルコースは荷造りと荷解きの両方をプラスしたものです。詳細はアート引越センターの公式ページで確認できます。
サカイ引越センター
「らくらくコースAプラン」「らくらくBコース」といった呼び方が広く知られていますが、公式サイト上の表記は「まるごとおまかせフルサービスプラン」「荷造りおまかせスタンダードプラン」「荷造り自分でエコノミープラン」という分かりやすい名称に整理されています。ネット上の解説記事は旧来の呼び方のままのものが多いため、見積もり時は現行のプラン名で確認したほうが話が早く進みます。
日本通運(NXの国内引越サービス)
家族向けにセルフプラン・ハーフプラン・フルプランの3つが用意されています。セルフプランは箱詰めと箱開けを自分で行い、ハーフプランは荷造りをスタッフが担当、フルプランは梱包から新居での箱開けまですべてを任せる内容です。いずれもスタッフ・トラック・ダンボール・運送保険が料金に含まれます。詳しくはNXの国内引越サービス公式ページをご覧ください。
アリさんマークの引越社
荷造りも荷解きも自分で行う「経済パック」、荷造りを任せる「アリさんパック」、荷造りから荷解きまで任せる「アリさんフルパック」、さらに家具の中身の収納まで対応する「アリさんスペシャルフルパック」という階層構成です。最上位のプランでは、食器棚やタンスの中身を元通りに戻すところまで対応します。
対応表で整理する
| 作業範囲 | アート | サカイ | 日本通運 | アリさん |
|---|---|---|---|---|
| 荷造りも荷解きも自分 | 基本コース | 荷造り自分でエコノミープラン | セルフプラン | 経済パック |
| 荷造りだけ任せる | ハーフコース | 荷造りおまかせスタンダードプラン | ハーフプラン | アリさんパック |
| 荷造りも荷解きも任せる | フルコース | まるごとおまかせフルサービスプラン | フルプラン | アリさんフルパック |
プラン名や内容は改定されることがあります。見積もりの際は、必ず各社の公式情報と担当者への確認で最新の内容を押さえてください。

おまかせプランの料金はどう決まる?
引越し料金の構成は、国土交通省が定める標準引越運送約款の考え方が土台になっています。おおまかには次の3つの合計です。
- 運賃:移動距離や作業時間に応じた基本料金
- 実費:作業員の人件費、梱包資材費、有料道路料金など
- 附帯サービス料:荷造り・荷解き、電気工事、不用品処分などのオプション費用
荷造りや荷解きは、この3つ目の附帯サービス料にあたります。約款の詳しい内容は国土交通省の標準引越運送約款のページで公開されています。
なぜ荷造りを頼むと高くなるのか
荷造りおまかせで上乗せされるのは、突き詰めれば人件費です。具体的には次のような理由で費用が増えます。
- 梱包を担当する作業スタッフが追加で必要になる
- 荷物量によっては、引越し前日に荷造りだけの作業日が発生する
- プロが梱包すると資材を十分に使うため、ダンボールや緩衝材の使用量が増える
- 荷解きまで頼む場合、新居での作業時間がさらに延びる
そのため、荷物が多い家庭ほど上乗せ額は大きくなります。単身と4人家族では、同じ「フル」でも金額の桁が変わってきます。
金額の目安を知る唯一の方法
おまかせ系プランの料金は、荷物量・間取り・距離・時期・作業員数の組み合わせで決まるため、定価表がありません。各社とも「◯◯円」と公表していないのが実情です。正確な金額を知るには、同じ作業範囲で複数社から見積もりを取って比べるしかありません。詳細は各社の公式サイトや見積もり時にご確認ください。
時期による差も大きい
3月から4月にかけての繁忙期は、そもそも作業スタッフが足りません。この時期は荷造りおまかせの受付自体を制限する業者もあり、受けてもらえたとしても料金は通常期より高くなります。時期をずらせる方は、需要が落ち着く時期を選ぶだけで選択肢が広がります。
荷造りおまかせが向いている人・向いていない人
向いている人
- 共働きで、平日も週末も荷造りの時間が取れない
- 小さな子どもがいて、作業中に目を離せない
- 妊娠中や体調面の不安があり、重い物を扱いたくない
- 急な転勤で、引越しまでの日数が2週間を切っている
- 荷物が多く、自力では期限に間に合いそうにない
- 食器やガラス製品が多く、自分で梱包する自信がない
食器の梱包だけが不安という場合は、段ボールに差し込むだけで皿やグラスを仕切れる梱包用の仕切りを使うと、自分でも割れにくく詰めやすくなります。
向いていないかもしれない人
- とにかく費用を抑えたい(附帯サービス料は削れる部分の筆頭です)
- 荷物が少なく、数日で自力の荷造りが終わる見込みがある
- この機会に持ち物を整理したい(人任せだと不要品もそのまま運ばれます)
- 家の中を他人に見られることに強い抵抗がある
特に3つ目は見落としがちです。荷造りを任せると、荷物は中身を見直さないまま新居へ移動します。断捨離をしたい方は、先に不用品を処分してからおまかせプランを頼むと、料金も下がって一石二鳥です。
おまかせプランを頼むときの注意点
貴重品は必ず自分で管理する
現金、通帳、印鑑、有価証券、貴金属といった貴重品は、荷造りおまかせであっても業者は梱包・運搬できません。これは約款で運送を引き受けない品目として定められているためです。当日は自分のカバンに入れて持ち歩いてください。
ペット、動植物、危険物、パソコンのデータなども別扱いになります。データのバックアップは自分で取っておきましょう。
見られたくないものは先に自分で箱詰めする
下着や個人的な書類など、他人に触れられたくないものは事前に自分でダンボールに詰めて封をしておけば、そのまま運んでもらえます。「この箱は開けないでください」と伝えておけば問題ありません。封は布テープでしっかり閉じ、箱の側面に「開封不要」などと書いておくと伝え漏れを防げます。
荷解きは「開けて出す」までが基本
フルプランの荷解きは、箱から出して指定の場所に収めるところまでが一般的です。どこに何を置くかは依頼者が指示する必要があるため、当日は立ち会って、収納場所を伝えられる状態にしておくことが前提になります。「全部お任せで外出していたら、どこに何があるか分からなくなった」という失敗はよく聞く話です。
前日作業になる場合がある
荷物量が多いと、荷造りは引越し前日に行われます。その場合、前日の夜は最低限の生活用品だけで過ごすことになります。着替えや洗面用具、翌日の食事などは手元に残しておきましょう。
終了後の軽作業サービスを確認する
業者によっては、作業終了後に短時間の軽作業を無料で頼めるサービスを用意しています。家具の向きを変える、カーテンを取り付けるといった作業をお願いできることがあるので、契約時に有無を確認しておくと便利です。
費用を抑えつつラクをする折衷案
1. 食器やキッチンだけ任せる
荷造りで最も時間と神経を使うのが食器・調理器具まわりです。ここだけをオプションで依頼できる業者もあります。全部任せるより費用を抑えつつ、負担の大きい部分を減らせます。
2. ハーフにして荷解きは自分でやる
引越し後は時間の融通が利くという方なら、ハーフ階層が費用対効果の面で選びやすい選択肢です。荷解きは自分のペースでできる作業なので、期限に追われる荷造りだけを外部に出す考え方は理にかなっています。
3. 先に荷物を減らす
荷造りおまかせの料金は荷物量に比例します。不用品を処分し、使わない家具を売却してから見積もりを取れば、上乗せ額そのものが小さくなります。
4. 繁忙期と土日を外す
平日、かつ月の中旬あたりは比較的スタッフに余裕があります。日程を動かせるなら、まずここを検討しましょう。
荷造りおまかせプランのQ&A
Q. 荷造りは何人で、どのくらいの時間がかかりますか?
A. 荷物量によりますが、単身なら数時間、家族世帯なら半日から1日程度が目安です。作業人数も荷物量に応じて決まります。正確な所要時間は、訪問見積もりの際に担当者へ確認してください。
Q. 掃除もしてもらえますか?
A. 引越し作業に掃除は含まれません。ただし、清掃業者と提携したオプションを用意している業者もあり、新居のクリーニングを一緒に頼めることがあります。別料金になるのが一般的です。
Q. 冷蔵庫や洗濯機の準備も任せられますか?
A. 冷蔵庫の霜取りと水抜き、洗濯機の水抜きは、時間がかかるため依頼者側で前日までに済ませておくよう案内されるのが一般的です。取り外し・取り付け作業自体は業者やその提携先が行います。
Q. 荷造り中に壊れたらどうなりますか?
A. 業者が梱包した荷物の破損は、運送保険や業者の補償の対象になります。到着後すぐに中身を確認し、破損があればその場で申し出てください。時間が経つほど原因の特定が難しくなります。
Q. 途中でプランを変更できますか?
A. 作業員やトラックの手配に関わるため、直前の変更は難しい場合があります。変更したいと思った時点で早めに連絡しましょう。なお、契約を解約・延期する場合の手数料は約款で上限が定められており、引越し日の前々日で運賃等の20%以内、前日で30%以内、当日で50%以内とされています。3日前までであれば手数料はかかりません。
Q. 単身でもフルプランは頼めますか?
A. 頼めます。荷物が少ない分、上乗せ額も家族世帯より抑えられます。仕事が忙しい単身赴任の方などが利用するケースは珍しくありません。
Q. 見積もりは電話だけで出せますか?
A. 荷造りおまかせの場合、荷物量の把握が料金に直結するため、訪問見積もりまたはオンライン見積もりを求められることがほとんどです。電話やWebだけの概算では、当日に金額が変わるリスクが高くなります。
Q. ダンボールは自分で用意しなくてよいですか?
A. おまかせ系プランでは、業者が資材を持参して梱包します。ただし無料で提供される枚数に上限がある場合があるため、荷物が多い方は事前に確認しておくと安心です。
まとめ:階層をそろえて比べるのが最短ルート
おまかせプランを選ぶときの手順は、次の3つに整理できます。
- 階層を決める:荷造りだけ任せるのか、荷解きまで任せるのかを先に決める
- 名前を読み替える:各社のプラン名を同じ階層に置き換えて整理する
- 同条件で相見積もり:同じ作業範囲・同じ日程で複数社に見積もりを依頼する
荷造りおまかせは決して安い選択ではありませんが、引越し前後の数日をまるごと取り戻せると考えれば、費用に見合う場面は多くあります。自分の時間と予算のバランスを見ながら、ちょうどいい階層を選んでください。


