引越しで扱いに困る家電の代表格が洗濯機です。水道と排水につながっているぶん、冷蔵庫よりも手順が多く、順番を間違えると床を水浸しにしてしまいます。とくにドラム式は重量があり、固定ボルトを付けずに運ぶと故障につながる可能性があります。この記事では、洗濯機の水抜きから取り外し、運搬、そして新居での取り付けまでを順に追いながら、自分でやる場合の手順と、業者に任せたほうがいいケースの見分け方を整理してお伝えします。

まずは全体の流れをつかむ
洗濯機の引越しは、大きく分けて4つの工程で構成されます。
| 工程 | いつやるか | 内容 |
|---|---|---|
| 水抜き | 前日 | 給水ホース・洗濯槽・排水ホースの水を抜く |
| 取り外し | 前日〜当日朝 | ホース類を外し、アース線と電源プラグを抜く |
| 運搬 | 当日 | できるだけ立てたまま運ぶ。ドラム式は固定ボルト装着 |
| 取り付け | 搬入後 | 防水パンに設置、ホース接続、試運転で水漏れ確認 |
この4つのうち、個人でやって失敗が多いのは「水抜き」と「取り付け後の水漏れ確認」です。逆に言えば、この2か所さえ丁寧にやれば、大きなトラブルにはなりにくいということでもあります。
前日にやる|水抜きの手順
水抜きは、給水ホース側から先に、排水ホース側を後にするのが鉄則です。順番を逆にすると水があふれます。
手順1|洗濯物を空にして蛇口を閉める
洗濯槽の中を空にしたら、洗濯機用の蛇口(水栓)をしっかり閉めます。ここを閉め忘れたままホースを外すと、勢いよく水が噴き出します。最初にやることは蛇口を閉めること、と覚えておいてください。
手順2|1分ほど運転して給水ホース内の水を抜く
蛇口を閉めた状態で、洗濯機の電源を入れて「標準コース」などで1分ほど運転します。すると給水ホースの中に残っていた水が洗濯槽へ吸い込まれます。運転を止めたら、給水ホースを蛇口側から外します。このときホースの中に少し水が残っていることがあるので、下にタオルやバケツを置いておきましょう。
手順3|脱水運転で洗濯槽の水を排出
給水ホースを外したら、今度は脱水コースを1分ほど回します。これで洗濯槽と内部の経路に残った水が排水ホースから流れ出ます。脱水は必ず給水ホースを外したあとに行います。
手順4|排水ホースを外して水を抜く
最後に排水ホースを外します。ホースの中に水が残っているので、洗濯機側の接続部を外したら、ホースの先端を持ち上げながら、洗面器やバケツに向けて水を出し切ります。床を濡らさないよう、周囲にタオルを敷いてから作業してください。
- 作業前にバケツ・雑巾・タオルを3〜4枚用意しておく
- 外したホースは洗濯槽の中に入れておくと紛失しない
- 付属していた継手やパッキンは小袋にまとめ、洗濯機に貼り付けておく
- 水抜きが終わったら、洗濯槽のフタを開けたまま乾かす
バケツは引越しの荷造りで真っ先に箱詰めしてしまいがちなので、たためるタイプを1つ手元に残しておくと水抜きの日に困りません。

取り外しの仕上げ
水が抜けたら、残りの作業はシンプルです。電源プラグを抜き、アース線をコンセントのアース端子から外します。アース線はネジ止めか差し込み式になっていることが多く、ドライバーが必要な場合があります。
そして防水パンに置いてある場合は、洗濯機をパンから引き出します。底の四隅にある脚がパンのふちに引っかかりやすいので、片側ずつ持ち上げながら少しずつ動かします。無理に引きずるとパンが割れることがあります。
取り外しが終わったら、洗濯機の下と防水パンの中を掃除しておきましょう。ここは普段まったく掃除できない場所なので、退去時のチェックでも見られます。
防水パンの四隅や排水口まわりは手が入りにくいので、細いすき間用のブラシがあるとホコリや糸くずをかき出しやすくなります。
ドラム式の場合は固定ボルトが必須
ドラム式洗濯機には、輸送用の固定ボルト(輸送用ボルト)を取り付けないと運べないという重要な決まりがあります。ドラム式は洗濯槽がバネとダンパーで宙づりに支えられている構造で、そのままだと運搬の揺れで槽が暴れ、内部の部品が損傷するおそれがあるためです。
固定ボルトは、購入時に本体に取り付けられていたか、付属品として同梱されていたものです。設置のときに外して保管しているはずなので、探してみてください。見つからない場合は、メーカーに部品として注文できることがあります。引越しが決まったら真っ先に固定ボルトを探すくらいの優先度で考えておくと安心です。
固定ボルトを装着せずに運んだことによる故障は、メーカー保証や引越し業者の補償の対象外と判断されることがあります。ドラム式は本体価格が高いため、ここを省略するリスクは大きいと考えてください。ボルトが見つからない場合は、必ず事前に引越し業者へ相談しましょう。
また、ドラム式は縦型に比べて重量があり、機種によっては80kg前後になります。玄関や廊下の幅もぎりぎりになりがちなので、搬出入経路の寸法確認は入念に行ってください。

新居での取り付け手順
手順1|設置場所を確認する
まず防水パンのサイズと、洗濯機の底面サイズが合うか確認します。パンより本体が大きいと設置できません。また、蛇口の高さも重要です。蛇口が低いと、洗濯機のフタが当たって開かなくなることがあります。ドラム式や縦型の大型機を置く予定なら、内見のときに測っておくと安心です。
手順2|水平を出す
洗濯機は水平に置かないと、脱水時に大きく揺れて音が出たり、故障の原因になったりします。多くの機種は脚の高さを回して調整できるようになっているので、水平器(スマホのアプリでも代用可)を天板に置いて、前後左右の傾きを確認しながら調整します。
手順3|給水ホースを接続する
蛇口側に給水ホースを取り付けます。ネジ式の給水栓には四つネジの継手を使い、しっかり締めてから、ホースをカチッと音がするまで差し込みます。ここの接続が甘いと、水圧でホースが外れて部屋が水浸しになります。接続後は必ず手で引っ張って抜けないか確認してください。
ホースが古くて硬くなっていたり、新居の蛇口までの長さが足りなかったりする場合は、給水ホースだけ買い替えるという手もあります。
手順4|排水ホースを接続する
排水口にホースを差し込みます。防水パンの中に排水口がある場合は、ホースの取り回しに無理がないか確認します。ホースが折れ曲がっていたり、途中で持ち上がっていたりすると、水が流れにくくなります。
手順5|アース線と電源
アース線をコンセントのアース端子に接続してから、電源プラグを差します。アース接続は感電を防ぐためのもので、水まわりの家電では重要です。アース端子がない場合は、増設が必要になることがあるため、管理会社に相談してください。電気の安全な使い方については、製品評価技術基盤機構(NITE)の事故防止情報も参考になります。
手順6|試運転で水漏れを確認
接続が終わったら、洗濯物を入れずに一度短いコースを回します。給水中は蛇口とホースの接続部、排水中は排水口まわりをじっと見て、水がにじんでいないか確認します。ここを省略すると、翌日の洗濯で気づかないうちに床が濡れていた、ということになりかねません。
自分でやるか、業者に頼むか
洗濯機の取り外しと取り付けは、引越し業者に依頼できます。プランに含まれている場合もあれば、オプション扱いで追加料金がかかる場合もあり、対応は業者ごとに異なります。金額の幅も広いため、見積もりの段階で「洗濯機の脱着は含まれますか」「ドラム式ですが対応できますか」と具体的に確認してください。
判断の目安を整理すると、次のようになります。
- 自分でも比較的やりやすい:縦型・小型で、蛇口がネジ式の給水栓になっている場合
- 業者に任せたい:ドラム式、防水パンがない床置き設置、蛇口が特殊な形状、2階以上で階段のみ
- 必ず相談すべき:固定ボルトが見つからない、蛇口が古くて固い、アース端子がない
とくに古い賃貸物件では、蛇口が固着して回らないことがあります。無理に力をかけると水栓ごと壊れて水が止まらなくなるので、そこは触らずに管理会社へ連絡するのが正解です。
買い替える場合の処分
引越しを機に買い替えるなら、古い洗濯機は家電リサイクル法の対象品目にあたり、粗大ごみとしては出せません。買い替え先の販売店に引き取ってもらうか、購入した店舗、自治体が案内する引取業者、指定引取場所への持ち込みといった方法で処分します。
費用はリサイクル料金と収集運搬料金の合計です。リサイクル料金はメーカーごとに定められており、改定されることもあるため、依頼前に最新の金額を確認してください。品目別の料金は家電リサイクル券センターの料金一覧で公開されています。制度の概要は経済産業省のページで確認できます。
よくある質問
Q. 水抜きをしないで運ぶとどうなりますか?
A. 運搬中にホースや本体内部から水がこぼれ、トラックの荷台や他の荷物を濡らします。段ボールに入れた衣類や書類が被害を受けることもあります。引越し業者から水抜きを求められるのは、このためです。
Q. 洗濯機は横に倒して運べますか?
A. 基本的には立てた状態で運びます。倒すと内部の部品に負荷がかかったり、残った水がこぼれたりします。軽自動車で運ぶなど、どうしても傾ける必要がある場合は、あらかじめ取扱説明書で許容される姿勢を確認してください。
Q. 前の家で使っていた給水ホースは新居でもそのまま使えますか?
A. 蛇口の形状が同じなら使えます。ただしホースのゴムは経年で硬くなり、ひび割れから水漏れすることがあります。長く使っているホースは、この機会に新しいものへ交換しておくと安心です。
Q. 防水パンがない部屋に設置しても大丈夫ですか?
A. 設置自体は可能ですが、万一の水漏れがそのまま床に広がります。かさ上げ台や後付けの防水トレーを使うと、掃除もしやすくなります。賃貸の場合は、水漏れによる床の損傷が原状回復の対象になる可能性があるため、対策をしておくと安心です。
Q. 取り付け後、脱水のときに大きな音がします。
A. まず水平が出ているか確認してください。脚のどれかが浮いていると振動が大きくなります。ドラム式の場合は、固定ボルトを外し忘れていないかも確認を。設置時にボルトを付けたまま運転すると異音や故障の原因になります。
Q. 引越し業者に脱着を頼むと当日いくらかかりますか?
A. 業者・機種・作業内容によって金額が変わります。当日に追加で依頼すると割高になることや、そもそも対応できないこともあるため、見積もりの段階で伝えて金額を確定させておくのが確実です。
まとめ
洗濯機の引越しは、前日の水抜きが山場です。蛇口を閉める、1分運転して給水ホースの水を抜く、脱水で洗濯槽の水を出す、最後に排水ホースを外す。この順番を守れば、床を濡らさずに作業できます。
ドラム式なら固定ボルトの装着が欠かせません。見つからない場合は早めにメーカーや引越し業者に相談してください。新居では水平を出し、ホースをしっかり接続したうえで、必ず試運転をして水漏れがないか目で確認する。ここまでやって、ようやく設置完了です。
迷ったら業者に任せるのも立派な選択です。とくにドラム式や、階段のみの物件では、無理をしないほうが結果的に安く済みます。見積もりのときに一言確認しておくだけで、当日の負担はぐっと軽くなります。
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