引越しが決まって荷造りが一段落すると、次に気になってくるのが「ご近所への挨拶品、何を持っていこう」という問題です。安すぎると失礼かもしれないし、高すぎると相手に気を使わせてしまう。のしは必要なのか、名前は書くべきなのか。細かい疑問が次々に出てきます。
挨拶品は高価なものである必要はまったくありません。大切なのは、相手が気軽に受け取れて、生活の中で無理なく使えるものを選ぶことです。金額の目安と定番の品物、そしてのしの基本さえ押さえておけば、迷うことはなくなります。
この記事では、引越しの挨拶品の相場、相手別の考え方、選んで喜ばれやすい品物と避けたほうがよいもの、のし紙の書き方、購入場所まで、実際に必要な情報を整理して解説します。

引越しの挨拶品、相場はいくら?
まず金額の目安からです。挨拶品の相場は、1軒あたり500円から1,000円程度とされています。「思ったより安い」と感じた方もいるかもしれませんが、この価格帯には理由があります。
挨拶品は、これから長くつき合うご近所への「顔見せ」の役割を持つものです。高価なものを渡すと、相手が「お返しをしなければ」と負担に感じてしまいます。気軽に受け取ってもらえる金額に収めることこそが、相手への配慮になるのです。
相手によって金額を変える
ただし、すべて同じ金額にする必要はありません。相手との関係性によって、少し調整するのが一般的です。
| 挨拶する相手 | 金額の目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 両隣・上下階の住民 | 500〜1,000円程度 | 気軽に受け取れる金額に |
| 大家さん・管理人さん | 1,000〜3,000円程度 | 今後お世話になるため少し丁寧に |
| 戸建ての向こう三軒両隣 | 500〜1,000円程度 | 軒数が多いので統一する |
| 町内会長・自治会長 | 1,000〜2,000円程度 | 地域の行事などで関わりが出る |
| 旧居のご近所 | 500〜1,000円程度 | お世話になったお礼として |
戸建ての場合は「向こう三軒両隣」といって、両隣2軒と向かいの3軒、合計5軒に挨拶するのが昔からの慣習です。マンションやアパートでは、両隣と真上・真下の部屋が基本の範囲になります。
挨拶品として選ばれやすい定番の品物
何を選べばいいか迷ったら、「消えもの」と呼ばれる、使えばなくなるものを選ぶのが鉄則です。相手の好みや家の雰囲気に左右されず、後に残らないため負担になりません。
日用品・消耗品
- 洗濯洗剤・食器用洗剤:どの家庭でも使う定番。少し良いメーカーのものを選ぶと喜ばれる
- タオル・フェイスタオル:何枚あっても困らない。無地や落ち着いた色が無難
- ラップ・アルミホイル:キッチンの必需品で、置き場所も取らない
- ハンドソープ:来客時にも使えて実用的
- ティッシュペーパー・キッチンペーパー:かさばるが実用性は高い
洗剤やタオルが定番とされるのは、好みが分かれにくく、使えばなくなるものだからです。特に洗剤は、普段自分では買わない少し良いものをもらうと嬉しい、という声が多い品目です。
食べ物・飲み物
- 個包装の焼き菓子:クッキー、フィナンシェ、せんべいなど日持ちするもの
- ドリップコーヒー・ティーバッグ:軽くて日持ちし、価格帯も選びやすい
- のり・ふりかけ:和風の定番で、幅広い年代に受け入れられやすい
お菓子を選ぶ場合は、必ず個包装で日持ちするものにしましょう。生菓子や要冷蔵のものは、相手のその日の予定を縛ってしまいます。
金券・商品券
クオカードや図書カードといった金券は実用性が高い一方で、金額がそのまま見えてしまうため気を使わせやすい面があります。相手との距離感を考えると、初対面のご近所への挨拶品としては、日用品や菓子のほうが無難でしょう。

避けたほうがよい品物
よかれと思って選んだものが、相手にとっては困りものになることがあります。以下は避けたほうが無難です。
- 生もの・要冷蔵のもの:受け取る側の予定を縛る
- かさばるもの:置き場所に困る。特に集合住宅では負担になりやすい
- 香りが強いもの:芳香剤や香り付き洗剤は好みが分かれる
- 刃物:「縁を切る」を連想させるとして避ける考え方がある
- ハンカチ:漢字で「手巾(てぎれ)」と書き、手切れを連想させるという説がある
- アルコール類:飲まない家庭も多く、好みが強く出る
- 手作りのもの:初対面の相手には受け取りにくい
- キャラクターものや個性の強いデザイン:好みが分かれる
特に気をつけたいのが、かさばるものです。ティッシュ5箱パックのような大きな品は、相手が玄関先で受け取った瞬間に「置き場所どうしよう」と考えることになります。片手で受け取れるサイズ感を意識すると失敗しません。
のし(熨斗)の書き方と選び方
挨拶品にはのし紙をかけるのが一般的です。難しく考える必要はなく、押さえるべきポイントは3つだけです。
1. 水引は「紅白の蝶結び」
蝶結びは何度でも結び直せることから、「繰り返してよいお祝いごと」に使われます。引越しの挨拶はこれに該当します。結び切り(一度きりを意味する)は結婚や快気祝いに使うものなので、間違えないようにしましょう。
2. 表書きは「ご挨拶」
新居での挨拶なら、のしの上段に「ご挨拶」と書きます。旧居でお世話になった方への挨拶なら「御礼」とするのが一般的です。
3. 下段には自分の名字を書く
のしの下段には、これから名乗る名字を書きます。名字を伝えることが、挨拶品にのしをかける本来の目的と言ってもよいでしょう。玄関先で名乗っても、相手は覚えきれないことがあります。のしに書いてあれば、あとから確認してもらえます。
のしは包装紙の外側にかける「外のし」が一般的です。渡した瞬間に名前が見えるため、挨拶の目的にかなっています。手書きが苦手な方は、購入店でのし紙の記入をお願いできることがほとんどです。
スーパーやドラッグストアで品物を買う場合は、「ご挨拶」と印字されたのしシールを用意しておくと、名字を書いて貼るだけで済みます。
マナーの詳細については日本通運の引越しに関するよくある質問や引越し侍のマナー解説ページでも紹介されています。
挨拶品はどこで買う?
購入場所によって、選べる品揃えや手間が変わります。
ネット通販
「引越し 挨拶ギフト」で検索すると、のし対応済みの商品が数多く見つかります。まとめ買いができ、のしの記入もお任せできるので、忙しい引越し準備中には非常に便利です。ただし配送に日数がかかるため、引越しの1週間以上前には注文しておきましょう。
デパート・ギフトショップ
品質と包装の丁寧さで安心感があります。大家さんや管理人さんへの少し丁寧な品を選びたいときに向いています。のしの対応も確実です。
スーパー・ドラッグストア
手軽さと価格の安さが利点です。洗剤やラップなど定番品が揃い、当日でも購入できます。ただしのし紙は自分で用意する必要がある場合が多く、文具店や100円ショップで購入して自分で書くことになります。
ホームセンター
タオルや日用品の品揃えが豊富で、価格も抑えめです。引越し用の資材を買うついでに揃えられるのも利点でしょう。

何軒分用意すればいい?
挨拶に行く軒数は、住まいの形態によって変わります。
- マンション・アパート:両隣2軒+真上・真下2軒の計4軒が基本
- 戸建て:両隣2軒+向かい3軒の計5軒(向こう三軒両隣)
- 角部屋や端の部屋:隣が1軒だけなら、その分少なくなる
- 大家さん・管理人さん:敷地内に住んでいる場合は追加で1軒
- 予備:留守で渡せなかった分の再訪用に1〜2軒分の余裕を
賃貸で管理人さんが常駐している物件では、ゴミ出しのルールや設備の使い方を教えてもらう機会が多くなります。管理人さんへの挨拶は、実務的にも役に立つ場面が多いものです。
Q&Aコーナー:引越しの挨拶品でよくある質問
Q1. 挨拶品を渡さないのは失礼にあたりますか?
地域や住まいの形態によります。近年は単身世帯やセキュリティ意識の高い物件を中心に、挨拶をしない選択をする方も増えています。特に女性の一人暮らしでは、防犯の観点から挨拶を控えるという判断も尊重されています。管理会社に地域の慣習を聞いてみるのも一つの方法です。
Q2. 挨拶品にのしは必ず必要ですか?
必須ではありませんが、のしがあると名字が伝わるという実用的な利点があります。簡易的な「短冊のし」でも構いませんし、名前を書いた小さなカードを添えるだけでも十分です。
Q3. 家族全員の名前を書くべきですか?
名字だけで問題ありません。世帯主のフルネームを書く形もありますが、防犯上の観点から名字のみにする方が多くなっています。
Q4. 相手が留守だった場合はどうすればいいですか?
時間帯を変えて2〜3回訪ねてみて、それでも会えなければ手紙を添えて郵便受けに入れるか、ドアノブにかけておく方法があります。ただし、食品を長時間放置するのは避けたほうがよいので、そのような場合は品物を渡さず、挨拶状だけを入れておくのが安全です。
Q5. 旧居のご近所にも挨拶品は必要ですか?
長年住んだ場所であれば、お世話になったお礼として渡すと丁寧です。表書きは「御礼」とします。短期間の居住や、ほとんど交流がなかった場合は、口頭での挨拶だけでも十分です。
Q6. 大家さんへの挨拶品は、住民と分けたほうがいいですか?
今後の入居中に何度も相談する相手になるため、少し丁寧な品を選ぶ方が多くなっています。1,000〜3,000円程度を目安に、菓子折りやタオルセットなどを選ぶとよいでしょう。
Q7. 子どもがいる家庭では、何か配慮したほうがいいですか?
小さなお子さんがいる場合、足音や泣き声で迷惑をかける可能性を伝えておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。挨拶品と一緒に「ご迷惑をおかけするかもしれません」と一言添えるだけで、相手の受け取り方は大きく変わります。
まとめ:挨拶品は「気軽に受け取れるもの」がいちばん
引越しの挨拶品は、1軒あたり500〜1,000円程度が目安です。大家さんや管理人さんには1,000〜3,000円程度と、少しだけ丁寧にするとよいでしょう。品物は洗剤、タオル、個包装の菓子といった消えものが定番で、かさばるものや香りの強いもの、生ものは避けるのが無難です。
のし紙は紅白の蝶結び、表書きは「ご挨拶」、下段に名字。この形を覚えておけば、どんな場面でも通用します。のしは名字を伝えるための実用ツールだと考えると、書き方に迷わなくなります。
挨拶品そのものより大切なのは、これから隣人として暮らしていくという気持ちが伝わることです。丁寧に、でも気負いすぎず。それだけで、新しい暮らしのスタートは十分によいものになります。



