引越しの挨拶で意外と悩むのが、「いつ行けばいいのか」と「何て言えばいいのか」です。品物は用意したものの、インターホンを押す直前で言葉に詰まってしまった、という経験をした方もいるのではないでしょうか。
挨拶は、タイミングと時間帯を外さなければ、あとは短い言葉で十分です。長々と自己紹介する必要はありません。むしろ手短に済ませるほうが、相手の時間を奪わず好印象につながります。
この記事では、旧居と新居それぞれの挨拶のタイミング、訪問に適した時間帯、挨拶する範囲、そして玄関先でそのまま使える例文を、シーン別にまとめて紹介します。留守だったときの対応や、挨拶をしないという選択についても触れていきます。

旧居での挨拶はいつ行く?
旧居では、引越しの前日までに挨拶を済ませておくのが基本です。当日は搬出作業でトラックが停まり、廊下や階段を何度も往復するため、どうしても騒音や通行の妨げが発生します。事前に一言伝えておくだけで、印象はまったく変わります。
挨拶の内容は、お世話になったお礼と、引越し当日に迷惑をかけるかもしれないという断りの2点です。引越し日と、おおよその作業時間帯を伝えておくとより丁寧です。
- タイミング:引越しの1週間前〜前日まで
- 伝えること:お世話になったお礼、引越し日、作業でご迷惑をかける可能性
- 品物:長く住んだ場合は用意すると丁寧(表書きは「御礼」)
- 短期間の居住や交流がない場合:口頭のみでも十分
品物を用意するなら、洗剤のようにどの家庭でも使う消耗品が無難です。旧居・新居の分をまとめて手配しておくと、直前に慌てずに済みます。
新居での挨拶はいつ行く?
新居では、引越し当日、できれば搬入作業が始まる前が理想的です。これから騒がしくなることを先に伝えておけば、相手も心の準備ができます。「これから作業が始まりますが、よろしくお願いします」という一言は、それだけで大きな意味を持ちます。
ただし、当日は自分もバタバタしているため、現実的には難しいこともあります。その場合は搬入が終わったあとや、遅くとも翌日までに伺えば問題ありません。
事前に挨拶に行くという選択肢
近距離の引越しであれば、入居の数日前に挨拶を済ませておくという方法もあります。引越し当日の騒音について事前に伝えられるうえ、当日の慌ただしさとも重なりません。時間に余裕があるなら、こちらのほうが丁寧な印象になります。
引越しから1週間以上経ってからの挨拶は、かえって間が悪くなります。「今さら来られても」と思われたり、相手が気を使ってしまったりするためです。都合がつかない場合は、挨拶状を郵便受けに入れておくほうがスマートです。
訪問に適した時間帯
タイミングと同じくらい重要なのが時間帯です。せっかく丁寧に挨拶に行っても、時間帯を間違えると迷惑になってしまいます。
| 時間帯 | 適否 | 理由 |
|---|---|---|
| 早朝〜午前9時 | 避ける | 支度中や就寝中の可能性が高い |
| 午前10時〜12時 | 適している | 在宅していれば対応しやすい時間 |
| 12時〜13時 | 避ける | 食事の時間帯 |
| 14時〜18時 | 適している | 最も訪問しやすい時間帯 |
| 18時〜20時 | 場合による | 夕食や入浴と重なりやすい |
| 20時以降 | 避ける | 非常識と受け取られる |
基本は午前10時から午後6時頃までと覚えておけば、時間帯で失礼になることはまずありません。平日の日中に不在が多い世帯なら、土日の午後を狙うと会える確率が上がります。

どこまで挨拶に行けばいい?範囲の考え方
挨拶する範囲は、住まいの形態によって異なります。生活音が伝わる相手を意識すると考えやすくなります。
マンション・アパートの場合
両隣と、真上・真下の部屋が基本です。足音や物音は上下に伝わりやすいため、上下階への挨拶は特に意味があります。角部屋なら隣は1軒だけになりますし、最上階なら上の部屋はありません。
大家さんや管理人さんが同じ建物や敷地内にいる場合は、その方にも挨拶しておきましょう。設備の使い方やゴミ出しのルールなど、実務的な情報を教えてもらえる機会にもなります。
戸建ての場合
昔から「向こう三軒両隣」といわれるとおり、両隣2軒と向かいの3軒、合計5軒が基本です。地域によっては裏の家や、班・組といった単位での挨拶が必要になることもあります。町内会や自治会がある地域では、会長さんへの挨拶が慣習になっていることもあるため、不動産会社に聞いてみるとよいでしょう。
戸建てでは、ゴミ集積所の管理や町内会費の集金など、地域の共同作業に関わる場面が出てきます。最初の挨拶で顔を覚えてもらっておくと、その後の生活がぐっとスムーズになります。
そのまま使える挨拶の例文
玄関先での挨拶は30秒程度で十分です。長く話すと相手の時間を取ってしまいます。以下の型を覚えておけば、どんな場面でも対応できます。
新居で、引越し当日の朝に挨拶する場合
「おはようございます。本日、隣の◯◯号室に引越してまいりました◯◯と申します。これから荷物の搬入で、ご迷惑をおかけするかもしれません。よろしければお使いください。どうぞよろしくお願いいたします」
新居で、搬入後に挨拶する場合
「こんにちは。本日、上の階の◯◯号室に引越してまいりました◯◯と申します。今日は作業でお騒がせしてしまい、申し訳ありませんでした。心ばかりですが、よろしければお使いください。これからよろしくお願いいたします」
小さな子どもがいる場合
「こんにちは。◯◯号室に引越してまいりました◯◯と申します。小さな子どもがおりますので、足音などでご迷惑をおかけすることがあるかもしれません。何かお気づきの点があれば、遠慮なくおっしゃってください。よろしくお願いいたします」
ペットを飼っている場合
「こんにちは。◯◯号室に引越してまいりました◯◯です。犬を飼っておりますので、鳴き声などでご迷惑をおかけしましたら申し訳ありません。気をつけてまいりますので、よろしくお願いいたします」
旧居で退去前に挨拶する場合
「こんにちは。◯◯号室の◯◯です。このたび、◯月◯日に引越すことになりました。当日は搬出作業でお騒がせしてしまいますが、どうぞよろしくお願いいたします。これまで本当にお世話になりました」
大家さん・管理人さんへの挨拶
「はじめまして。本日◯◯号室に入居いたしました◯◯と申します。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。何かとお世話になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします」
共通する型は「挨拶→部屋番号と名字→迷惑をかける可能性への断り→品物を差し出す→今後のお願い」です。この順番で組み立てれば、どんな相手にも自然な挨拶になります。

訪問時に気をつけたい振る舞い
身だしなみを整える
引越し作業中は作業着や汚れた服になりがちですが、挨拶に行くときは軽く整えておきましょう。マスクをしている場合は、玄関先で外すか「マスクのままで失礼します」と一言添えると丁寧です。
玄関先で済ませる
「上がってください」と言われても、初回の挨拶では玄関先で辞退するのが一般的です。相手も社交辞令で言っていることが多いためです。
長話をしない
質問攻めにしたり、身の上話をしたりするのは避けましょう。相手が話したそうであれば応じればよく、こちらから会話を広げる必要はありません。
複数人で押しかけない
家族で引越した場合でも、全員でぞろぞろ訪問すると相手が構えてしまいます。代表者1〜2人で伺うのがスマートです。
相手の家族構成や職業などを尋ねるのは控えましょう。初対面で個人情報を聞かれると、警戒心を持たれてしまいます。自分の情報も、名字と部屋番号以外は無理に伝える必要はありません。
留守だった場合の対応
訪問しても不在ということはよくあります。以下の手順で対応すれば問題ありません。
- 1回目:日を改めて、時間帯を変えて再訪する
- 2〜3回目:それでも会えなければ、挨拶状を郵便受けに入れる
- 品物を置く場合:食品は避け、日用品なら袋に入れてドアノブにかける
- 目安:3回訪ねて会えなければ、無理に会おうとしない
挨拶状には、部屋番号と名字、引越してきた日、簡単な挨拶を書きます。「ご挨拶に伺いましたが、ご不在でしたので書面にて失礼いたします」と添えれば、訪ねたことが伝わります。
なお、玄関先に品物を置いておくのは、盗難や誤配のリスクがあります。食品や貴重品は置かず、挨拶状のみにするのが安全です。挨拶にまつわるマナーや品物の選び方は、アート引越センターの引っ越し挨拶マナー解説やサカイ引越センターの「あいさつ・習慣」でも紹介されています。挨拶の品はタオルや洗剤といった日用品が定番で、相手に気を使わせない価格帯のものが選ばれています。
挨拶をしないという選択について
近年は、引越しの挨拶をしない人も増えています。これは礼儀を欠いているというより、住環境の変化によるものです。
- 防犯上の理由:一人暮らし、特に女性は世帯構成を知られたくない事情がある
- オートロック物件:そもそも他の階に行けない構造の建物もある
- 物件の方針:管理会社が「挨拶は不要」と案内しているケースもある
- 生活時間帯のずれ:単身向け物件では在宅時間が合わないことが多い
一人暮らしで防犯が気になる場合は、挨拶をしない、あるいは管理会社経由で入居を知らせてもらうという方法も選べます。自分の安全を優先する判断は、決して失礼にはあたりません。判断に迷ったら、管理会社や不動産会社に「この物件では挨拶は一般的ですか」と聞いてみるとよいでしょう。
挨拶を控える場合でも、新居の防犯はあわせて見直しておくと安心です。賃貸でも工事なしで取り付けられる補助錠は、対策のひとつとして取り入れやすいアイテムです。
Q&Aコーナー:引越しの挨拶でよくある質問
Q1. 挨拶に行く時間がどうしても取れません。どうすればいいですか?
挨拶状を郵便受けに入れる方法があります。部屋番号、名字、引越してきた日、簡単なお願いの言葉を書けば十分です。会えたときに改めて声をかければ、失礼にはなりません。
Q2. 一人暮らしの女性ですが、挨拶に行くのが不安です。
無理に行く必要はありません。防犯上の懸念があるなら、挨拶を控えるという選択も尊重されるべきです。どうしても気になる場合は、家族や友人に同行してもらう、日中の明るい時間に行く、玄関のドアを大きく開けないなどの配慮をしましょう。
Q3. 隣人が挨拶に来ませんでした。こちらから行くべきですか?
気になるようであれば、こちらから行っても構いません。ただし相手にも事情があるかもしれないので、深く考えすぎないことです。廊下やエレベーターで会ったときに軽く会釈するだけでも、関係は十分に築けます。
Q4. 挨拶のときに自己紹介はどこまでするべきですか?
名字と部屋番号だけで十分です。家族構成や職業を細かく伝える必要はありません。ただし、小さな子どもやペットがいる場合は、その点だけ伝えておくと後々のトラブル防止になります。
Q5. マンションの上下階に挨拶したいのですが、オートロックで行けません。
その場合は管理人さんに相談すると、対応方法を教えてもらえることがあります。共用の掲示板に入居の挨拶を貼らせてもらえる物件もあります。難しければ、無理をせず両隣だけにとどめても構いません。
Q6. 挨拶の際、相手が不在で品物を置いてきました。問題ありませんか?
日用品であれば大きな問題にはなりませんが、誰からのものかわからないと相手が困ります。必ず名字と部屋番号を書いたメモを添えましょう。生ものや食品は、放置される時間がわからないため避けたほうが安全です。
Q7. 挨拶をしたあと、どのくらいの距離感でつき合えばいいですか?
顔を合わせたら挨拶をする、という程度で十分です。無理に親しくなろうとする必要はありません。適度な距離感を保つことが、長く快適に暮らすコツです。
まとめ:タイミングと一言さえ押さえれば、挨拶は難しくない
引越しの挨拶は、旧居なら前日まで、新居なら当日から翌日までに済ませるのが基本です。訪問する時間帯は午前10時から午後6時頃までを目安に、食事どきと夜間は避けましょう。範囲は、集合住宅なら両隣と上下階、戸建てなら向こう三軒両隣が目安になります。
言葉は「挨拶→名前と部屋番号→迷惑をかけるかもしれないという断り→今後のお願い」の型を覚えておけば十分です。30秒で終わる短いやり取りですが、その後の暮らしやすさは大きく変わります。
そして、防犯上の理由などで挨拶をしないという判断も、いまでは十分に受け入れられています。大切なのは形式ではなく、これから同じ場所で暮らす人への配慮です。無理のない範囲で、気持ちよく新生活を始めてください。



